DDD 1

DDD 1 (講談社BOX)

DDD 1 (講談社BOX)


すっげー……
なんだこの求心力。
奈須きのこ氏というと、言うまでも無く「Fate/stay night」やら「月姫」やらのシナリオライターであり、なんと映画化されるっぽい「空の境界」の作者であるので、その知名度はけっこうなものだとは思うのですが……
いや、ごめんなさい。
これ、凄い。
見くびっておりました。
いや正直、「もうあんだけ稼いだ人だし、ぼったくりとしか思えない講談社BOXからの発売だし、まったく期待はできないけど、ファンとしてはやっぱり買っておくか」ってな気持ちでしかなかったんですよ。


最初の一ページでこっぱみじんにされました。


速攻で返り討ちですよ。
なんだこのケレン味たっぷり怪しさ最上の文章は!?
読んでて背中が震えましたよ。
中身を最後まで読んで、次巻の発売がいつか真剣に調べましたともさ!


いや、設定だけをただ見ると、実はそう大したことはないんですよ。「悪魔憑き」とか、片腕欠損の主人公とか。ラノベのテンプレート上では、とてもありきたりな、どこかで見た類のものだと思います。
問題は、そんなところにはありません。
物語の焦点は、まったく別のところに当てられてます。
独特の緊迫した文章。ばっさり変化してくれやがる場面転換。空の境界を思わせる病院・記憶・殺人鬼などといったキーワード。
これらですら、一つの要素でしかありません。


思いっきり、騙してくれるんですよ。
日常+悪魔憑きとかだけでも面白いのに、それだけでは飽き足らないのか、那須氏の手のひらの上、思いっきりころころ転がしてくれやがるんですよ!
こんなの回避不能だって!
ああ、もう、ゼッタイ推理小説とか大好きだ、この人。
しかもそれらに、怪しくも魅力的なキャラクターやら、あっかるくもどこか怪しい主人公やら、妙に怪しい設定やらがプラスされてるので、もう、なにがなんだか……
頭の中を気ままにかき回される感覚になれること、請け合いです。


ああ、それと、月姫Fateで使われていた手法――まず丁寧に日常を描き、徐々に『別のもの』を混ぜ込んでゆくという、ある意味気長な手法は、今回は使われておりません。端っからどっぷりと、フルアクセルで非日常に浸かってます。
その代わり、主人公が妙に一般人。気軽で気楽で自由気ままな兄ちゃんといった雰囲気。
そんな主人公が非日常を闊歩し、非日常の中で日常を叫んでくれやがるわけです。


ええ、つまり、戦闘をメインに据えているのではなく、「悪魔憑き」という現象が起きた社会や日常、こっちをメインに据えているっぽいです。

いや、もう、マジでおすすめですよ。